湿疹の治療法 ~外用薬を考える~

要約

1 )ステロイドの副作用は内服薬による全身的副作用と、外用薬による皮膚の局所的副作用に別けられる。

2 )外用薬による副作用は長期間外用を続けた場合皮膚の局所的副作用として、外用部位にのみ①皮膚萎縮、②ニキビ、③毛細血管拡張などが起こる可能性があるが、内服薬で見られるような重篤な全身的副作用は殆ど見られない。

3 )外用薬の副作用が少ないと言っても、長期間に渡って漫然と外用を続けるのは好ましくなく、2週間に1度くらいは受診して①その時点での湿疹の程度に対して外用薬の強さが適切かどうか、②局所的副作用が出ていないかどうか、をチェックする必要がある。

4 )慢性的な湿疹の場合にはアレルギーの素因がある場合が多く、ステロイド外用だけではだめで、抗アレルギー剤の内服薬を併用しアレルギーをコントロールして湿疹をできにくくする必要がある。抗アレルギー剤を併用するとステロイド外用剤を更に減量できる。

 

はじめに

今から10数年前のことですが、あるテレビのニュース番組で「ステロイド(副腎皮質ホルモン)は危険」という報道がなされ、多くの方々が「ステロイドは怖い。ステロイドを使うと病気になる。失明する。」などと報道内容にさらに輪をかけて噂が広がり大騒ぎになりました。

あまりにもその後の反響・騒ぎが大きかったために後日その番組で「ステロイドは本当は良い薬で、正しく使えば安全な薬です。」という訂正の報道がなされたのですが、既に取り返しはつかず最初の報道を信じ込んでしまった人々は、後の訂正報道には耳を貸さなかったようです。今でも時々ステロイド外用薬を強硬に拒否する患者さんがいらっしゃいます。そういう患者さん達に拒否する理由を聞いてみると誤解が数多くあるように思われます。そこで現時点でもう一度冷静にステロイドの作用・副作用について考える必要があると思い、このテーマを取り上げました。

 

外用薬の局所的副作用

副作用を考えずに作用のみで考えると湿疹・皮膚炎群の治療薬としてはステロイド外用薬は良く効く良い薬です。また正しい使い方をすれば安全な薬です。現在においてもこれに勝る薬はありません。

次に副作用についてですが皆さんステロイドの外用薬(皮膚局所における副作用)と内服薬(全身的副作用)の違いを混同して理解されているようです。

まず起こりうる副作用の種類についてですが、これは全身的副作用と皮膚局所の副作用に分けられます。まず皮膚局所における副作用ですが、長期に渡って外用した部位にのみ

①皮膚萎縮

②ニキビ

③毛細血管拡張

などが起こり得ます。ただこれらは長期に渡って外用した部位にのみ起こる事であり、外用してない部位や短期間しか外用してない部位には決して起こりません。

また局所的副作用は外用を中止することで数ヶ月で改善されますし全身への影響はありません。ただそれらの副作用が起こっていないかどうかを定期的にチェックする必要がありますので、少なくとも1ヶ月に2回は受診される事をお勧めします。またステロイド外用薬には強さ分類で5段階あり、良くなりしだい弱い物に代えていく必要がありますので、その意味でも定期的な受診をお願いします。

 

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内服薬の全身的副作用

さて問題の全身的副作用ですが、

①肥満

②高血圧

③糖尿病

④胃潰瘍

などが起こり得ます。これらの副作用は一度起こると確かに治療に長期間かかるのですが、ステロイドを中止する事でかなり早く改善する場合もあります。

 

ただこれらの副作用はステロイドの外用薬ではなく内服薬使用により起こるものです。これらはステロイドの血中濃度が高くなる事によって起こるものですが、ここで内服薬と外用薬の違いを混同している方が数多くみえます。ステロイド内服薬はその代表的なプレドニゾロン錠の含有するプレドニン換算量で表現されます。プレドニゾロン1錠には5mgプレドニゾロンが含まれます。よく内科の先生たちは1日1錠なら全身的副作用は起こらないと言います。

私達も膠原病などどうしてもプレドニン内服をしなければならない患者さんを数多く診てきて、10年以上プレドニンを1日1錠内服させていますが、全身的副作用は殆どみた事はありません。 ここでステロイドの外用薬とプレドニン1錠を内服した場合のその血中濃度を予測してみましょう。ただし薬物による副腎皮質ホルモンの血中量を直接測定する事はできませんので、これは理論的予測と言う程度のものです。

 

まずプレドニン1錠を内服した場合その全量が胃腸で消化吸収され血液内に入ると考えると血液内には5mgステロイドが存在すると考えられます。 一方外用薬は大人が全身に外用薬を塗布しても外用薬使用量はせいぜい3gです。外用薬のステロイド含有量は0.05~ 0.1%ですので3g中に3mgプレドニゾロンが含有されています。

ただし外用薬として皮膚に塗布した場合には内服薬と違ってその全量が血液内に吸収されるわけではなく、殆どは皮膚の表皮までしか到達しません。ごく僅かな量のみが真皮まで到達し、血管から血液内に取り込まれるだけです。この量は内服薬の数百分の1とも言われています。もちろん皮膚は胃腸と違って消化吸収器官ではありませんので血液中への吸収量が胃腸に比べて遥かに少ないことは常識的にも頷けます。もし数百分の1、例えば300分の1と仮定すると外用薬3gの含有ステロイド量3mgの血液中への吸収量は0.01mg、プレドニン1錠5mgの吸収量の500分の1に当たります。

ましてや腕や足や顔だけに0.5gぐらいを外用する場合には全身的副作用はほとんど問題ないと思われます。 例のニュース番組の時私も注意深くその内容を見ていましたが、副作用を起こした患者さんが外用薬と内服薬をどれくらいの期間、どれくらいの量を使用していたのかはついにその番組では触れませんでした。そういうアヤフヤな報道で、一方的に「ステロイドは危険」と報道するのは社会的にも大きな問題があります。

 

確かではないのですが日本皮膚科学会もその後番組にクレームを付け、ステロイドの使用状況などについて公表を求めたと思いますが、その後の訂正報道でも薬の使用状況などについてはついに公表されなかったように思います。今の時代ではこのような根拠の薄いアヤフヤな報道は「風説の流布」といわれても仕方がありません。

 

アトピー性白内障とステロイド性白内障

もう一つ、アトピー性皮膚炎の患者さんが白内障を併発しステロイド(外用なのか内服なのか公表しませんでした。)の副作用だと報道しました。その患者さんの写真の皮膚をみるとそれほど全身に湿疹があるわけではなく「これではステロイド外用薬を皮膚に外用してもステロイド性白内障にはならないはずだが?」と考えていました。友人の眼科医にも意見を聞いたところ「もしこれがステロイド性白内障だとすれば、長期間にわたってステロイドを大量に内服するか、あるいはステロイド眼軟膏を長期間、直接点眼し続けなければ起きない。皮膚の外用薬のせいにするのは無理がある。使用薬剤について何も公表しないのは問題がある。むしろこの例はステロイド性白内障よりもっと頻繁にみられるアトピー性白内障と考えた方がよいのでは。」とのことでした。

一般的にアトピー性白内障はかなりの確率で起こります。私自身もこれまでに10例ぐらいは見つけてきました。一方ステロイド性白内障はよほど長期間大量にステロイド内服を続けないと発症しないと言われています。私自身は今まで1例も見つけたことはありません。

 

私たちのステロイドの使用方針と抗アレルギー剤内服療法

今までお話したとおり、ステロイド外用薬は全身的副作用については実際には殆ど問題にはなりません。ただ皮膚における局所的副作用については長期に渡って大量に使い続けると確かによくはありません。従って外用薬を使用する場合には

①その時点での湿疹の程度に対して外用薬の強さが適切かどうか

②局所的副作用が出ていないかどうか

をチェックする必要があります。そのためにも2週間に1回程度は受診をお願いします。

 

また外用薬も副作用が少ないとは言え長期に渡って漫然と使用するのは好ましくなく、先の見通しをしっかり立てて少しでも使用量を少なく、少しでも副作用の少ないものに代えて行く必要があります。そのための方法として私共では抗アレルギー剤の内服を積極的に行っております。

「アレルギー性皮膚疾患」のページでも述べましたが、長期間湿疹が続いている場合にはアトピー性皮膚炎を含めてアレルギー性の場合が殆どであり、外用薬だけではコントロールできない事は患者様ご自身がよく理解してみえます。「長年外用薬だけを使用して塗った時は一時よくなるが、3日もすればまた湿疹ができる。長年これを繰り返しているだけ。」とおっしゃいます。

私はこれらの慢性的に続く湿疹はアレルギー性のものであると考えておりますので、外用薬ももちろん使用はしますが、抗アレルギー剤の内服を治療の基本としアレルギーをコントロールすることを患者様に勧めております。私は患者様に「外用薬は一時抑えの薬でアレルギーを抑えて湿疹をできなくする効果は全くない。抗アレルギー剤はアレルギーをコントロールして湿疹をできなくする薬です。」と説明しております。大変多くの患者様が抗アレルギー剤の内服でアレルギーがおさまり「湿疹ができにくくなった。」「外用薬が不要になった。」とおっしゃいます。

 

また抗アレルギー剤の内服も最初は毎日内服する必要がありますが、数ヶ月続けると内服量を減量でき、3日に1回或いは1週間に1回ぐらいまで減らすこともできます。もちろん湿疹自体ができなくなりますので外用薬はほとんど必要ありません。 ちなみに抗アレルギー剤については副作用のほとんどない安全な薬が多数開発されておりますので安心してお使い頂けます。ステロイド外用剤の副作用は局所的で全身的にはほとんど問題ないのですが、抗アレルギー剤を併用することでステロイド外用剤を更に減量することができます。

 

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