やけどについて
要約
1 )受傷面を流水で充分冷やす。
2 )治療には二次感染の予防と治療が大事。
はじめに
やけどは普通の熱傷と低温熱傷に分けられますが低温熱傷については後で述べます。熱傷のうち受傷面積が体表面積の10%以上の場合(概ね上肢1本分の面積)には入院が必要です。あるいは10%以下でも受傷部位が顔面で眼・鼻腔・口腔内に受傷していて気道熱傷の合併が考えられる場合には入院が必要ですので、すぐに救急車を呼んで大きい病院に入院してください。ここでは入院の必要のない軽症のやけどの場合の受傷後の注意点・治療法などについてお話します。
受傷後まずやってもらいたい事は徹底的に受傷部を冷やす事です。やけどは受傷後もしばらくの間はじわじわと受傷部が拡がって行きますので、徹底的に冷やすことが大事です。冷やし方は氷水などは必要なく普通の水道水で良いですから長時間流水で冷やして下さい。痛みがなくなるまで冷やしたら受診して下さい。
やけどの深さ
よく患者さんから「痕が残りますか」と聞かれますが、これは深さによって決まります。ここで深さの分類について少し詳しくお話しましょう。深さの分類は
A )1度(表面の紅斑のみ。日焼けなどと同じです。)
B )2度浅層(水疱ができて水疱内部の底が赤い。)
C )2度深層(水疱ができて水疱内部の底が白い。あるいは水疱がとれてびらんになっている。)
D )3度(皮膚壊死・潰瘍)
E )4度(炭化)
の5段階です。このうち痕が残らないのはA )とB )のみで、C )・D )・E )は痕が残ります。
すなわち1度の紅斑のみの場合か2度浅層で水疱底が赤い場合にはには痕は残りませんがそれ以上になると瘢痕やケロイドが残ります。もちろん治るまでの時間も深いほどかかります。
二次感染とその対策
やけどの場合にはほぼ100%受傷面に二次感染が起こります。細菌が入り膿が出始めます。やけどの治療はこの二次感染との戦いといっても過言ではありません。この二次感染を丁寧な消毒や抗生物質の内服や生活上の注意によって上手にコントロールすれば早くきれいに治りますが、消毒や内服をおろそかにしたり生活上の注意点を守らなかったりすると治りも遅くなり治り方も汚くなります。
これは私が経験した実例です。ある病院にやけどで通院していた患者がやってきて、「3ヶ月も毎日通ったのにちっとも治らないのでここに来てみた。」と言いました。みるとなるほど3ヶ月も治療している割りには傷は治ってなくて汚い状態です。外したガーゼをみると緑色の膿が付いていておりその瞬間私には治らない理由がすぐにわかりました。
このガーゼの緑色の膿は受傷面に緑膿菌という二次感染の細菌のなかでも比較的珍しい菌が付いている証拠であり、こういう場合には緑膿菌に感受性のある特別な抗生物質を使わないと二次感染をコントロールできません。果たしてその患者さんが前の病院で貰っていた抗生物質は緑膿菌には効かない薬でした。
したがって「その薬をいくら内服しても緑膿菌は消えず、傷も汚くちっとも治らない。」という結果になっていたのです。私の診療所で緑膿菌に感受性の強い抗生物質を処方し毎日通院してもらい傷面の洗浄・消毒を丁寧にやったら2週間で完治しました。
この例からも判るとおり二次感染をいかにコントロールするかが、早くきれいに治すポイントです。それには膿や傷の状態を医師が絶えず診察してその時その時の状況にあった消毒・処置法・処方薬を考える必要があります。ですから通院を面倒くさがらず、毎日きちんと診察を受けて適切な治療を受けることが早くきれいに治すポイントといえます。
低温熱傷
睡眠中などに湯たんぽなどで受傷するのを言います。特徴は長時間中・低温の温熱源に接し続ける事によって狭い範囲に深い熱傷ができます。治りが悪く完治までに時間がかかります。皮膚が壊死や炭化状態になっている時にはその部分を切除し植皮をすることもあります。
まとめ
以上のようにやけどをしたらよく受傷面を流水で冷やしてから受診してください。治療においては二次感染に対する予防と治療が大切で毎日きちんと診察を受けて適切な消毒・処置を受け、薬もきちんと使うことが早くきれいに治すポイントです。